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破産制度

第17回破産コラム 債権者の方から破産を申し立てる第三者破産とは 要件やメリット・デメリットを解説

経営に行き詰まり、会社を畳むことを余儀なくされた経営者は、破産を検討することになりますが、破産手続きは、裁判所に申し立てを行うことによって開始されます。

通常、この破産は、債務者自らが裁判所に申し立てを行いますが、法律上は、債務者だけではなく、一定の要件の下で、債権者の方から申し立てを行うことも可能です。債権者の申し立てによる破産のことを「第三者破産」または「債権者破産」と呼びます。

今回のコラムでは、この債権者の方から破産を申し立てる「第三者破産」について、その要件やメリット・デメリットを解説したいと思います。

第三者破産(債権者破産)とは

第三者破産(債権者破産)とは、債務の支払が不能となった債務者ではなく、支払を受けることができなくなった債権者が行う破産申し立てのことをいいます。

通常、破産手続きは、債務者にとってメリットとなるため、債務者側から申し立てを行うのが一般的ですが、債務者がいつまで経っても支払をしてくれないし、かといって破産もしないという状況が続くと、回収不能な債権を抱え続けることになり、債権者にとっても不利益となる場合があります。また、詐害的な弁済により債務者の財産が散逸してしまう危険性もあります。

そこで、法律では、一定の要件の下で、債権者側からも破産を申し立てることができるようにしています。それが第三者破産というわけです。

第三者破産の要件

第三者破産を申し立てる際には、債権の存在および破産手続の開始原因を疎明する必要があります。

破産法第18条2項
債権者が破産手続開始の申立てをするときは、その有する債権の存在及び破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。

破産法 | e-Gov法令検索

「疎明」とは、耳慣れない用語かもしれませんが、証拠による裏付けが、裁判官に「事実である」と確信させる「証明」には至らないものの、「一応確からしい」との推測に達する程度の裏付けはできていることを意味します。簡単に言うと、緩やかな証明が疎明というイメージです。

債権の存在の疎明

第三者破産を申し立てるには、自身が債権者でなければならないため、債務者に対する債権の存在を疎明する必要があります。債権の存在がわかる契約書や借用書、取引記録等を提出します。

破産手続の開始原因の疎明

破産手続の開始原因がないと破産の申し立てはできません。債務者が法人の場合には、その法人が「支払不能」であるか「債務超過」の状態にあることを疎明する必要があります。

債務超過とは、法人特有の破産開始原因であり、「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」を指します。簡単に言うと、貸借対照表上の、「資産の部」の額よりも「負債の部」の額の方が多い状態になります。

「支払不能」や「債務超過」であることを疎明するためには、債権者の方で債務者の資産状況を正確に把握する必要があるため、通常の破産申し立てよりハードルが高くなる傾向にあります。

第三者破産のメリット

損金処理が可能

回収不能な債権であっても、債権として発生している以上は、会計上は売上として計上され、法人税や消費税も納める必要があります。

しかし、債務者が破産した場合には、回収不能となった債権を損金として計上することができます。損金として計上した場合には、その分の法人税や消費税等の負担を削減することができます。

債務者の不当な財産処分の防止

破産の申し立てを行い、破産手続きが開始されると、全ての債務者の財産は、裁判所に選任された破産管財人が管理することになります。それにより、特定の債権者だけに抜け駆け的に支払を行うなどの、不当な財産処分が行われることを防止することができます。

また、第三者破産を行えば、原則として、債務者の全財産を債権回収の対象にできるため、通常の債権回収とは異なり、差し押さえる財産を特定する必要もなくなります。

第三者破産のデメリット

第三者破産のメリットは上述の通りですが、第三者破産にはデメリットもあります。

高額な予納金

そもそも破産を申し立てる際には、予納金と呼ばれる費用を裁判所に納付する必要があります。予納金は、通常、数百万程度はかかり、ケースによっては数千万円程となりますが、債権者が破産の申し立てを行う際には、申立人である債権者が納付しなければならなくなります。

裁判所への疎明

上の第三者破産の要件で解説しましたが、債権者が破産を申し立てる際には、債権の存在および破産手続の開始原因を疎明する必要があります。債務者の資産状況を、債務者ではなく債権者が調査し、資料を集めるのは大変な労力が必要となります。裁判所側も、債務者ではない債権者からの申し立てには慎重に判断する必要があるため、審尋に時間を要する傾向にあります。

債権回収手段としてそこまで有効ではない

破産手続によって債務者の財産から債権者へ配当がなされますが、その配当は、債権額に応じて公平に行われます。申し立てを行った債権者への優遇や優先権などは基本的にはありません。
破産が開始されるということは、債務者は支払不能または債務超過の状態にあるため、当然、債権を全額回収することは不可能であり、通常の破産と同程度の額しか債権を回収できないのが普通です。

手間と費用をかけて第三者破産の申し立てを行ったとしても、優遇措置等はなく、債権の回収率が上がるというようなこともないのです。

おわりに

今回のコラムでは、債権者の方から破産を申し立てる「第三者破産」について、その要件やメリット・デメリット解説しましたが、いかがだったでしょうか。第三者破産を申し立てる際には、メリット・デメリットをよく把握した上で、検討することをおすすめします。単に節税のために損金算入したいというケースでは、第三者破産以外の手段が有効なケースも多く、わざわざ第三者破産を選択するケースは稀とも言えます。

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