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破産制度

第18回破産コラム 破産管財人に認められた否認権とは何か

会社や法人が破産を申し立てると、通常は、管財事件として扱われ、破産管財人が裁判所によって選任されることになります。破産管財人には、破産者の財産を管理し、処分するための様々な権限が与えられており、特に、否認権と呼ばれる重要な権利が認められているのが特徴です。今回のコラムでは、破産管財人に認められた否認権とは何かについて解説したいと思います。

破産管財人について詳しい解説は、「第4回破産コラム 法人破産の基礎知識 破産管財人とはどんな人?」をご覧下さい。

否認権とは

破産手続きが開始されると、破産者の財産は、破産管財人によって管理され、破産者の自己の財産に対する管理処分権は制限されることになります。

破産という制度は、支払不能または債務超過に陥った債務者の財産を、債権者に公平に分配することを目的としているため、公平中立な立場の破産管財人に、債務者の財産の管理・処分を任せるためです。

しかし、破産手続の開始決定前であれば、破産者の財産管理処分権には何らの制限もなく、自由に財産を処分できるのが原則となります。

そうすると、破産者の経済状況が悪化し、破産手続開始決定前の段階において、破産者が自己の財産を身内や友人に不当に廉価で売却したり、または、お世話になった特定の取引先にのみ優先的に支払を行うなどの行為が横行するおそれがあります。

そのような行為が横行すると、債権者への公平な配当を行うという破産法の目的が達成できなくなってしまいます。

そこで、法は、上記のような詐害的な破産者の行為等の効力を否定し、散逸した破産者の財産を取り戻す権利を、破産管財人に認めているのです。その権利が、否認権というわけです。

否認権の類型

否認権が行使される場面はいくつかあるのですが、代表的な類型として下記の2つの類型があります。

詐害行為否認

破産者が債権者を害することを知ってした財産減少行為について、その行為の相手方が債権者を害することを知らなかった場合を除き、否認の対象とされます。これが詐害行為否認と呼ばれる類型です。

例えば、債権者を害することを知りながら、自己の1,000万円相当の自動車を100万円で売却するというような行為が否認の対象となります。

なお、通常、否認権を行使するためには、破産者の内心が問題とされますが、支払の停止または破産手続開始の申立てがあった後に行われた詐害行為については、破産者の内心は問題にならず、受益者がその行為の当時、支払の停止などがあったこと及び破産債権者を害することを知っていれば否認の対象となります。

偏頗行為否認

偏頗行為否認とは、破産者が特定の債権者に対してのみ利益を与える行為をした場合に、その行為の効力を否定して、破産者の手元から失われた財産を取り戻すタイプの否認権です。

例えば、1,000万円相当の土地を、1,000万円の債務の弁済として、特定の債権者に供与した場合、それらの価値は釣り合っているため、上で解説した詐害行為にはなりません。

しかし、破産手続きにおいては、同じ優先順位の債権者同士では、債権額に応じて平等に取り扱われるべきです。にも関わらず、特定の債権者にだけ利益を与える行為が放置されてしまうと、破産制度の目的である、債権者間の公平を図ることができなくなってしまいます。

そこで、そのような特定の債権者だけ利するような偏頗的な行為は否認権の対象となるのです。

おわりに

今回のコラムでは、破産管財人に認められた否認権とは何かについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。否認権は、破産管財人が行使する権利なので、破産者の方が行使することはないのですが、詐害的な行為や偏頗行為などは、結局、否認権を行使され、財産が取り戻されることになる、というのが今回のコラムのポイントとなります。また、財産隠しなどを行うと、それが否認権の対象となるだけでなく、破産詐欺罪などの罪に問われる危険性がありますので、絶対にしてはなりません。

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