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破産制度

第12回破産コラム株式会社が破産を申し立てる際に、株主への事前通知は必要なのか

資金繰り、経営状況が悪化し、株式会社が破産を検討する際、気になるのが株主への対応。株主はいわば会社の実質的な所有者であるところ、そのような株主に対して破産することについての事前通知や了承を得る必要はあるのでしょうか。今回のコラムでは、株式会社が破産を申し立てる際に、株主への事前通知は必要なのか解説したいと思います。

株主への事前通知は原則不要

取締役会設置会社

株式会社のうち、取締役会設置会社では、法人破産の申し立ては、「会社の業務執行の決定」(会社法362条2項1号)に該当すると考えられるため、取締役会の決議事項とされています。

同決議については、特に株主への通知や同意等は要件とされていないため、株主への事前通知や同意がなくても、法人破産の申し立てをすることができます。

また、そもそも取締役会設置会社では、定款で特別の定めをしない限り、法人破産の申し立てを株主総会で決議することはできないため、株主総会決議事項とは無関係な事柄について事前通知する必要はないのが原則となります。

ただし、取締役会設置会社においても、定款で、法人破産の申し立てを、株主総会の決議事項と定め、取締役会の決議事項から除外することができます。定款にそのような定めがある場合には、例外的に、法人破産の申し立ては株主総会の専権事項となるため、総会で決議する都合上、株主総会招集通知等により、法人破産申し立てに関する事項を株主に事前通知する必要があります。

取締役会非設置会社

取締役会非設置会社では、法人破産の申し立てを株主総会で決議することも法律上可能ですが、それは他の会社の機関による意思決定を排除するものではないため、株主に事前通知をせずに会社として法人破産の申し立てを行うことは問題ありません。

法人破産を検討しているような段階では、すでに会社の経営状況は苦しく、そのような状態を放置していると、会社の資産状況が更に悪化し、配当原資も大きく減少してしまう危険性があるため、適切な時期に機動的に対応する必要があるからです。

なお、取締役会非設置会社においても、定款で、会社の他の機関の権限を制限し、法人破産を株主総会の専権事項と定めている場合には、株主のへの通知等は必要となりますが、取締役会非設置会社は、比較的小規模な会社であることが多く、そのような会社で、わざわざ上記のような定款の定めを置いているケースは非常に稀なケースです。

上場会社で事前通知はNG

上場している会社が破産申し立てをするという事実が市場に伝わると、破産により最終的に株式の価値はゼロとなるため、株価は一気に暴落します。

株価を大きく左右する法人破産のような重要な事実は、市場に参加する全ての者に対して、公平に情報提供されるべきであり、現在の株主という特定の者に対してのみ法人破産についての情報を通知するようなことがあれば、市場の公平性を大きく損なうことになってしまいます。

また、市場に公開されていない未公表の重要事実を元に株式を売買すると、いわゆる「インサイダー取引」として違法行為となってしまいますので、上場会社が株主に破産について事前通知を行うことは、インサイダー取引を誘発する危険な行為となりますので注意が必要です。

おわりに

今回のコラムでは、株式会社が破産を申し立てる際に、株主への事前通知は必要なのか解説しましたが、いかがだったでしょうか。少し専門的で難しい内容であったかもしれませんが、社長=100%株主というような会社では、社長がいわば歩く株主総会のようなものなので、特に気にすることはありませんが、上場会社や上場していなくてもそれなりの数の株主がいるという会社では、今回のコラムの内容を頭の片隅にとどめ、法人破産を検討する際には、定款を念のため確認するのが無難と言えます。

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