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破産制度

第8回破産コラム 法人破産を検討する際に知っておきたい未払賃金立替払制度とその適用条件

法人破産を検討する際に、従業員に迷惑をかけることを心配される経営者の方は少なくありません。未払いの給与等がある場合には、未払賃金立替払制度という公的な制度を利用することで一定の範囲で未払いの給与を国に立て替えてもらうことができます。今回のコラムでは、未払賃金立替払制度とその適用条件について解説したいと思います。

未払賃金立替払制度とは

未払賃金立替払制度とは、労働者とその家族の生活の安定を図る国のセーフティーネットとして、企業倒産に伴い賃金が支払われないまま退職した労働者に対し、その未払賃金の一部を国が事業主に代わって立替払する制度です。

簡単に言うと、会社が倒産してしまい、給与が支払われないまま退職した従業員に対して、国が一定の範囲で未払給与の立替払いをしてくれる制度となります。

未払賃金立替払制度は、事業主が全額負担する労災保険料を原資として、独立行政法人労働者健康安全機構が実施している制度で、全国の労働基準監督署が相談窓口となっています。

なお、「賃金の支払の確保等に関する法律」第7条がその根拠法となっています。

「賃金の支払の確保等に関する法律」第7条
政府は、労働者災害補償保険の適用事業に該当する事業(労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第八条の規定の適用を受ける事業にあつては、同条の規定の適用がないものとした場合における事業をいう。以下この条において同じ。)の事業主(厚生労働省令で定める期間以上の期間にわたつて当該事業を行つていたものに限る。)が破産手続開始の決定を受け、その他政令で定める事由に該当することとなつた場合において、当該事業に従事する労働者で政令で定める期間内に当該事業を退職したものに係る未払賃金(支払期日の経過後まだ支払われていない賃金をいう。以下この条及び次条において同じ。)があるときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百七十四条第二項から第四項までの規定にかかわらず、当該労働者(厚生労働省令で定める者にあつては、厚生労働省令で定めるところにより、未払賃金の額その他の事項について労働基準監督署長の確認を受けた者に限る。)の請求に基づき、当該未払賃金に係る債務のうち政令で定める範囲内のものを当該事業主に代わつて弁済するものとする。

賃金の支払の確保等に関する法律

未払賃金立替払制度の適用条件

未払賃金立替払制度の適用を受けるためには、企業側、労働者側に一定の条件があり、また、対象となる賃金や期間、金額にも制限が設けられています。

以下、各要件について詳しく解説します。

対象企業

対象となる企業は、労災保険の適用事業の事業主で、かつ、1年以上事業を実施していることが必要です。

対象となる「倒産」

立替賃金支払制度は、企業が「倒産」した場合に適用がありますが、その「倒産」と言えるためには、「法律上の倒産」に該当する必要があります。

「法律上の倒産」には、破産手続開始の決定、清算手続開始の命令、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定を受けた場合があります。

中小企業事業主の場合には、「法律上の倒産」にあたらなくても、「事実上の倒産」と言える場合にも適用が受けられるケースがあります。

「事実上の倒産」とは、企業の事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態になったことについて労働基準監督署長の認定があった場合のことをいいます。

対象となる労働者

対象となる労働者は、倒産した事業主に雇用され、労働の対価として賃金の支払を受けていた人が、これにあたります。パートやアルバイトも該当します。

同居の親族については、その同居の親族がたとえ形式上労働者として働いている体裁をとっていても、一般的には実質上事業主と利益を一にし、事業主と同一の地位にあると認められ、原則として労働者とは認められません。また、代表権を有する会社役員等も対象になりません。

対象となる賃金

対象となる未払賃金は、退職日の6か月前の日から立替払請求の日の前日までに支払期日が到来している「定期賃金」と「退職金」となります。

賞与や解雇予告手当、年末調整の還付金などは含まれません。また未払賃金の総額が2万円未満の場合は対象外となります。

立替払される金額

立替払される金額は、未払賃金総額の80%となります。ただし、立替払の対象となる未払賃金総額には、退職日の年齢による限度額があり、その限度額を超えるときは、立替払される金額は限度額の80%となります。

未払賃金総額の限度額
45歳以上:370万円
30歳以上45歳未満:220万円
30歳未満:110万円

例えば、未払賃金の総額が200万円であり、退職日の年齢が30歳の場合、未払賃金の総額が限度額である220万円を超えていないので、そのまま200万円の80%=160万円が立替払されます。

それに対して、未払賃金の総額が250万円であり、退職日の年齢が30歳の場合、未払賃金の総額が限度額である220万円を超えていますので、限度額220万円の80%=176万円が立替払されます。

立替払の請求期限

立替払の請求には期限があります。

法律上の倒産の場合には、裁判所の破産手続の開始等の決定日または命令日の翌日から起算して2年以内に請求する必要があります。

事実上の倒産の場合は労働基準監督署長が倒産の認定をした日の翌日から起算して2年以内に請求する必要があります。

未払賃金立替払制度の詳細は独立行政法人労働者健康安全機構のホームページでも確認することができます。
https://www.johas.go.jp/tabid/687/Default.aspx

おわりに

今回のコラムでは、未払賃金立替払制度とその適用条件について解説しましたが、いかがだったでしょうか。会社が倒産することで、職場が失われるという意味で従業員に迷惑をかけることにはなりますが、未払賃金立替払制度を利用することで、一定の範囲で未払いの給与等はカバーすることが可能となります。

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