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破産制度

第14回破産コラム 法人の準自己破産とは何か? 自己破産との違いも解説

経営状況が悪化し、改善の見込みはないが、取締役間の対立等があり、なかなか法人として破産という意思決定を行うことができないというケースも少なくありません。今回のコラムでは、法人として統一的な意思を形成するのが困難な場合に利用される準自己破産について解説したいと思います。

そもそも法人の自己破産とは

破産手続きは、裁判所に申し立てを行うことによって開始されるのですが、破産の申し立ては、債権者が申し立てることも、債務者自らが申し立てることもできます。そして、債務者自らが破産を申し立てることを、自己破産と言います。

破産制度は、個人でも法人でも利用すること可能ですので、債務者である法人自らが、自己の破産を申し立てることも可能であり、これが法人の自己破産ということになります。

法人の自己破産について詳しい解説は「第2回破産コラム 会社も自己破産できる!? 法人破産と個人の破産の違いについて」をご覧ください。

法人の準自己破産とは

法人が自己破産を申し立てる際には、その前提として、破産を申し立てるということについて、法人としての意思決定が必要となります。

法人の意思決定のプロセスについては、その法人の機関構成等によって異なりますが、例えば、取締役会設置会社では、原則として、取締役会の決議が必要となりますし、一般社団法人では、理事会の承認が必要となったりします。

そして、破産という重大な決断の前では、取締役間で意見が対立したり、社長等の代表者が強行に反対する等、統一的な意思形成を図ることが難しいケースも少なくありません。

しかし、経営改善の見込みがない中で、会社存続に固執する役員等の存在によって、法人としての統一した意思が形成できず、そのまま経営を続けると、傷口がさらに悪化し、多数の利害関係者に多大な迷惑をかけてしまうおそれがあります。

そのような一部の反対等により、法人としての意思決定が難しい場合に、事態の悪化を避けるべく用意された制度が準自己破産という制度であり、準自己破産では、取締役や理事等が単独で破産を申し立てることができます。

破産法19条第1項
次の各号に掲げる法人については、それぞれ当該各号に定める者は、破産手続開始の申立てをすることができる。
1 一般社団法人又は一般財団法人 理事
2 株式会社又は相互会社 取締役
3 合名会社、合資会社又は合同会社 業務を執行する社員

破産法 | e-Gov法令検索

法人の準自己破産と自己破産の違い

法人の自己破産は、法人としての意思決定の元に、法人自らが破産の申し立てを行います。それに対して、法人の準自己破産は、法人の構成員や機関である、取締役や理事等が法人の破産を申し立てを行います。つまり、申し立てを行う主体が異なります。

申し立てる主体は異なったとしても、どちらも法律上認められた破産申し立てである以上、破産の法的な効力や基本的な手続きは同一になります。

ただし、準自己破産の申し立てを行う者は、破産原因について、疎明責任というものを負います。

準自己破産の疎明責任とは

準自己破産は、法人としての統一的な意思形成が困難な場合に、事態の悪化を防ぐことのできる便利な制度ではありますが、その反面、少数派の取締役等が、自己の保身のためや会社の経営を妨害する意図で、濫用する危険性もあります。

そのような濫用的な準自己破産を抑止するために設けられた特別な責任が「疎明責任」であり、準自己破産を申し立てる者は、その法人における破産原因となる事実を「疎明」しなくてはならないとされています。

破産法19条3項
前二項の規定により第一項各号に掲げる法人について破産手続開始の申立てをする場合には、理事、取締役、業務を執行する社員又は清算人の全員が破産手続開始の申立てをするときを除き、破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない。

破産法 | e-Gov法令検索

「疎明」とは、法律の専門用語でありますが、証拠による裏付けが、裁判官に「事実である」と確信させる「証明」の程度には至らないものの、裁判官が「一応確からしい」との推測に達する程度の裏付けはできていることを意味します。

簡単言うと、緩い証明が疎明というイメージです。証拠によって証明し、裁判官に『これは間違いなく事実だな』と確信させる必要はないが、証拠によって、裁判官に『証明されたとまでは言えないけど、一応確からしいな』と思わせる必要があるということです。

ちなみに、法人の破産原因には、支払い不能と債務超過がありますので、当該申し立てにかかる法人が、債務の支払不能になっているということ、または、債務超過になっているという事実を疎明することになります。

準自己破産の注意点

破産申し立ての際には、弁護士費用や裁判所への予納金等の費用がかかりますが、準自己破産のケースでは、それらの費用を申し立てを行う取締役等の個人で負担する必要があります。

上記のような費用は、債権者全体の利益に沿う費用になるため、財団債権という特別な債権として、優先的に弁済を受けることが可能ではありますが、申し立ての際には、一度お金を支払う必要がありますし、また、法人にめぼしい財産が残っていない場合には、支払った費用を回収できない可能性があります。

おわりに

今回のコラムでは、法人として統一的な意思を形成するのが困難な場合に利用される準自己破産について解説しましたが、いかがだったでしょうか。準自己破産には、金銭面で申し立てを行う者がリスクを負わなければならないという高いハードルがありますが、法人としての統一的な意思が形成できず、事態の悪化をどうしても止めたいという場合には検討する余地があります。準自己破産を申し立てる際には、疎明責任がありますので、利用を検討される場合には、破産問題に詳しい専門の弁護士の相談することをおすすめします。

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