経営状況、資金繰りが悪化し、破産という選択肢が視野に入ってきたとしても、破産による影響を心配される方が少なくありません。今回のコラムでは、破産を検討するにあたって、しっかりと押さえておきたい、法人破産のメリットとデメリットを解説したいと思います。
法人破産のメリット
債務がゼロになる
法人破産の最大のメリットは、債務がゼロになるということです。債務額が何千万、何億円とあっても、法人は破産することによって全ての債務がゼロになります。
個人の破産の場合には、破産しても滞納している税金の支払義務は残りますが、法人の場合には、借入金、買掛金、事務所の家賃、未払いの従業員の給与等はもちろん、滞納している税金の支払を含めたあらゆる債務がすべて破産によって消滅します。
債権者からの取立てや資金繰りの悩みから解放される
弁護士による受任通知や破産手続の開始決定により、債権者からの支払の要求や取立てがストップします。破産手続の開始決定がなされると、法律上、破産手続外で債権を取り立てることは禁止されますし、弁護士から受任通知が発せられた場合にも、事実上、取り立てはストップします。
取立てや督促が止まる理由について詳しい解説は「第5回破産コラム 法人破産の手続きを弁護士に依頼すると借金等の取り立てや督促が止まる理由」をご覧ください。
新たなスタート・再出発
会社が破産してしまったとしても、今までの経験・ノウハウ等を活かして、新たに会社を設立することは可能です。多額の負債を抱えたまま事業を立て直すより、ゼロから再スタートする方が早い場合があります。もちろん、会社経営からは退き、別の企業に転職すること等も可能です。
借金・負債がない状態で、新たなスタート・再起を図れるのも法人破産のメリットのひとつです。
法人破産のデメリット
事業の廃止・財産の消失
法人破産を選択した場合、特別な例外を除き、会社自体が消滅するため、今まで培ってきた事業・ブランドは全て廃止されることになります。また、法人が有していた有形・無形の財産・資産は、すべて破産手続きによって処分されますので、法人の財産・資産は最終的には全てなくなることになります。
従業員の解雇
会社自体が消滅し、事業を継続できなくなる以上、大変残念で、心苦しい決断とはなりますが、基本的に従業員を全員解雇することになります。
長年苦楽を共にしてきた従業員を解雇しなければいけないのは辛いことであり、債権者だけでなく従業員にも多大な迷惑をかけてしまうというのが法人破産の大きなデメリットと言えます。
代表者個人の破産も必要となることがある
会社の債務・借金は、代表者個人とは基本的には無関係ですが、会社が借入をする際に、代表者個人が会社の連帯保証人になっている場合には、法人だけでなく、代表者個人も破産しなければならない場合があります。
もちろん保証しているのが一部の債務のみであるなど、保証債務を代表者個人で弁済可能であれば問題はありませんが、通常、会社の債務は個人で支払えるような額ではないことがほとんどですので、代表者個人が連帯保証している場合には、個人破産も同時に行うことになります。
信用を失う
法人破産をすると、破産した会社の社長・代表者は、「会社を破産させた経営者」として、信用を失うことになります。
ですので、例えば、新規事業や新会社を設立しようとした際に、通常の金融機関からは、しばらく融資を受けるのが難しくなりますし、以前からの取引先や顧客が今まで通りに取引してくれるとは限りません。
そのため、自己資金で開業したり、元手がなくても行える事業にビジネスをシフトしたり、また、クラウドファンディングを活用する等、通常の金融機関からの融資を受けなくても始められる事業モデルを構築する必要があります。または、自らは代表者にはならずに、他の人に代表者になってもらうという方法もあります。一度失った信用を取り戻すことは容易ではありませんので、新規で事業を行う際には、取引先や顧客を新たに開拓する必要性もでてきます。
おわりに
今回のコラムでは、破産を検討するにあたって、しっかりと押さえておきたい、法人破産のメリットとデメリットを解説しましたが、いかがだったでしょうか。法人破産には、債務が全てゼロになるという強力なメリットがある反面、会社・法人が無くなることによる様々なデメリットもありますので、しっかりと理解し、破産を検討する際の材料としたいところです。
法人破産にはメリットもデメリットもありますが、やはりその影響は個別の事案によって異なります。法人破産で迷ったり、疑問・お悩みがある場合には、専門の弁護士にまずは相談することをオススメします。
当事務所は、法人破産や個人事業主の方の破産案件に注力しております。執拗な取り立てや督促にお困りの方や、資金繰り、コロナ融資の返済等でお悩みの方は、札幌でトップクラスの実績がある当法律事務所まで、お気軽にご相談下さい。初回相談は無料で、また相談時間に制限がないので、皆様のお悩みに専門の弁護士が、真摯にご対応いたします。