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第37回法人破産コラム 会社破産後に経営者の個人資産はどうなるか

会社の経営が思うようにいかず、毎日不安な気持ちで過ごしていらっしゃる経営者の方も多いのではないでしょうか。売上の減少、資金繰りの悪化、取引先からのプレッシャー…そうした状況の中で、「いっそ会社を畳むしかないかもしれない」と考え始めたとき、多くの経営者の方が真っ先に頭に浮かべるのが「自分の個人財産はどうなってしまうのか」という不安だと思います。

特に、会社の借入れに個人保証をしている場合や、自宅を担保に入れている場合には、「破産したら家も財産も全部失ってしまうのではないか」と恐れを感じていらっしゃる方も少なくないかもしれません。北海道・札幌の中小企業の経営者の方からも、こうしたご不安のお声を多くいただきます。しかし、破産は「すべてを失う」ための手続きではなく、「再出発のための手段」であることをぜひ知っていただきたいと思います。

今回のコラムでは、法人破産を申し立てた後に経営者の個人資産がどのような扱いを受けるのか、どのようなリスクがあり、どのように備えることができるのかについて、できるだけわかりやすく解説します。

法人破産と経営者個人の財産は「原則として別物」

会社と経営者は法律上「別の人格」

まず大前提として、株式会社などの法人は、経営者個人とは法律上まったく別の存在(法人格)として扱われます。これを「法人格の独立」といいます。そのため、会社が破産手続きを申し立てたとしても、それは会社の財産を清算するための手続きであって、経営者個人の財産が自動的に差し押さえられたり、処分されたりするわけではありません。

つまり、法人破産と経営者の個人破産は、あくまでも別々の手続きです。会社が破産しても、経営者個人は破産しないケースも十分にあり得ます。この点は、多くの方が誤解されている部分ですので、まずは安心していただければと思います。

経営者の個人資産に影響が出るケースとは

ただし、実際には経営者の個人資産に影響が及ぶ場面も少なくありません。主に以下のようなケースが考えられます。

  • 会社の借入れに個人保証(連帯保証)をしている場合
  • 自宅や個人資産を会社の担保として提供している場合
  • 会社の資金を個人的に流用するなど、不正行為があった場合
  • 役員としての善管注意義務違反が問われる場合

これらに該当する場合は、経営者個人に対しても債権者からの請求が及ぶ可能性があります。特に中小企業では、金融機関からの融資に際して経営者が連帯保証人になっているケースが非常に多く、この問題が経営者の最大の悩みになっていることが多いようです。

個人保証(連帯保証)がある場合のリスクと対処法

連帯保証人としての責任はどこまで及ぶか

会社が破産して債務を返済できなくなった場合、連帯保証人である経営者は、会社に代わって残債務の全額を弁済する義務を負います。これは非常に重大な責任であり、連帯保証額が大きければ、経営者個人も自己破産を余儀なくされる場合があります。

法人破産と同時、あるいは前後して経営者個人も破産申し立てを行うケースはよく見られます。個人破産の手続きでは、一定の「自由財産」は手元に残すことができます。具体的には、99万円以下の現金や、生活に必要な家財道具などは原則として処分の対象外となります。また、給与や年金などの収入についても、一定額は保護されます。破産は「何もかも失う」手続きではなく、生活再建のための最低限の財産は守られる仕組みになっています。

「経営者保証に関するガイドライン」という救済策

近年、中小企業の経営者を守るための重要な制度として、「経営者保証に関するガイドライン」が注目されています。このガイドラインは、金融機関と経営者が合意のうえで、個人保証の負担を一定の範囲に限定することを目指すものです。

このガイドラインを活用することで、破産手続きにおいても経営者が自由財産の範囲を超えた一定の資産を手元に残せる可能性があります。ただし、すべてのケースで適用されるわけではなく、金融機関との交渉や、手続きの進め方によって結果が異なります。弁護士に相談し、早い段階でこの制度の活用を検討することをお勧めします。

自宅(不動産)はどうなるか

自宅を担保提供している場合

会社の借入れのために、経営者が自宅に抵当権を設定している場合は、会社が返済不能になると、債権者(金融機関など)が抵当権を実行して自宅を競売にかけることができます。この場合、自宅を失うリスクは現実的に存在します。

一方、自宅に抵当権が設定されていない場合は、経営者個人が破産しない限り、自宅が差し押さえられることは原則としてありません。また、個人破産の手続きを行う場合でも、住宅ローンの残額と自宅の評価額によっては、住宅を維持できる可能性もゼロではありません。個人再生手続(住宅資金特別条項の利用)など、破産以外の選択肢を検討できる場合もありますので、早めに弁護士へご相談いただくことが大切です。

名義だけ経営者個人の財産である場合に注意

破産手続きにおいては、実質的に会社の財産と同一視できるような個人名義の資産については、否認権(破産管財人が一定の行為を取り消す権限)の対象となる可能性があります。例えば、破産直前に会社の資産を経営者個人の名義に移したような行為は、否認権によって取り消されることがあります。財産の移転については、申し立て前に十分な注意が必要です。

経営者が知っておくべき「してはいけないこと」

財産の隠匿・偏頗弁済は厳禁

経営が行き詰まった際に、経営者の方がついやってしまいがちな行為として、財産を隠したり、特定の債権者だけに優先して返済したりすることが挙げられます。しかし、これらの行為は破産手続きにおいて問題視されるだけでなく、最悪の場合、詐欺破産罪などの刑事責任を問われる可能性もあります。

また、一部の取引先や知人への返済を優先することも「偏頗弁済(へんぱべんさい)」として否認の対象となる可能性があります。「お世話になったから先に返したい」という気持ちは理解できますが、法律上は全債権者を公平に扱うことが求められています。

弁護士への早期相談が「できること」を増やす

破産手続きを検討する段階になったら、できるだけ早く弁護士に相談することが非常に重要です。早期に相談することで、経営者保証ガイドラインの活用、個人財産の適切な整理、破産以外の手続き(民事再生・特別清算など)の検討、といった選択肢を検討する余裕が生まれます。

一方、動き出すタイミングが遅れてしまうと、選択肢が狭まり、経営者の個人資産への影響も大きくなりやすい傾向があります。「まだ大丈夫だろう」と一人で抱え込まずに、早めに専門家へご相談いただくことをお勧めします。

おわりに

会社が破産しても、経営者個人の財産が自動的にすべて失われるわけではありません。法人と個人は別の存在であり、個人保証の有無・自宅の担保設定の有無・不正行為の有無などによって、経営者個人への影響は大きく異なります。また、経営者保証ガイドラインや個人再生など、経営者の生活再建を支援するための制度や手続きも存在します。破産は「人生の終わり」ではなく、新しいスタートを切るための法的な手段です。正しい知識を持ち、適切なサポートを受けることで、再出発への道は必ず開けます。

当事務所では、法人破産・倒産整理でお困りの経営者の方のご相談を随時受け付けております。初回相談は無料ですので、一人で抱え込まずにまずはお気軽にご連絡ください。経験豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた最善の解決策をご提案いたします。

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