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第45回法人破産コラム 会社の売却(M&A)と破産どちらを選ぶべきか

「このまま事業を続けられるのだろうか」「取引先や従業員に迷惑をかけたくない」。資金繰りに追われる中で、夜も眠れないほど悩んでおられる経営者の方は少なくないのではないでしょうか。

そうしたなかで、「会社をM&Aで売却できれば、破産せずに済むかもしれない」と考える方も多いかもしれません。一方で、「赤字や債務超過の会社に買い手がつくのか」「個人保証はどうなるのか」「そもそも時間が残されているのか」といった不安も尽きないと思います。

今回のコラムでは、会社の売却(M&A)と破産のどちらを選ぶべきかを判断するための材料として、赤字・債務超過でも売却できる可能性、従業員や取引先への影響、個人保証の扱い、使える時間や費用、そして相談すべき専門家とタイミングについて解説します。

赤字・債務超過の会社でもM&Aで売却できるのか

M&Aによる売却とはどういうことか

M&Aとは、会社の株式や事業を第三者に引き継ぐことです。中小企業では、株式をすべて譲渡する「株式譲渡」や、事業の一部だけを譲渡する「事業譲渡」がよく使われます。後継者不在の会社が選ぶ手段として広く知られていますが、資金繰りが厳しい会社でも、検討できる場合があります。

赤字や債務超過でも買い手が見つかる可能性

赤字や債務超過だからといって、必ずしも売却できないわけではありません。次のような強みがあれば、買い手が関心を持つ可能性があります。

  • 特定の技術、許認可、ノウハウ、顧客基盤がある
  • 優秀な従業員や安定した取引先がある
  • 立地や設備、ブランドに価値がある
  • 買い手の事業と組み合わせることで相乗効果が見込める

ただし、負債が大きい場合は、会社ごと売る株式譲渡は難しくなりがちです。その場合、採算の取れる部門だけを切り出す事業譲渡や、裁判所の関与する手続の中で事業を引き継ぐ方法が考えられます。また、買い手は財務や契約内容を詳しく調査するため、資金がほぼ尽きた状態では交渉期間が足りなくなるおそれもあります。

従業員・取引先・個人保証への影響を比較する

M&Aと破産で、雇用や取引先はどう変わるか

M&Aが成立すれば、従業員の雇用や取引関係が維持される可能性があります。取引先にとっても、供給先や仕入先が残ることは大きな安心材料です。ただし、事業譲渡の場合は引き継がれる従業員や契約が個別に決まるため、全員の雇用が守られるとは限りません。

破産の場合は、原則として事業を停止し、従業員は解雇となります。未払給与がある場合には、国の未払賃金立替払制度が利用できる可能性があります。取引先には債権の回収に影響が出るため、早めに適切な手順を踏むことが大切です。札幌をはじめ北海道では、地域の取引先同士の結びつきが強い場合も多く、連鎖的な影響にも配慮が必要です。

個人保証や借金はどうなるのか

中小企業では、社長が会社の借入れの連帯保証人になっていることが一般的です。M&Aで株式を譲渡する場合、買い手との交渉で、保証の解除や借換えを条件にできる可能性があります。ただし、金融機関の同意が必要で、必ず実現するとは限りません。

一方、会社が破産すると、保証人である経営者個人に請求が及ぶことがあります。その場合、経営者個人の債務整理(自己破産など)が検討対象になります。近年は「経営者保証に関するガイドライン」により、一定の条件のもとで保証債務を整理し、自宅や当面の生活資金などを残せる可能性もあります。個別の事情で結論は大きく変わるため、早めに専門家へ確認されることをおすすめします。

手続に使える時間・費用と、判断のタイミング

M&Aと破産、それぞれの期間と費用の目安

M&Aは、準備から成約まで半年から1年程度かかることが一般的です。仲介会社への着手金や成功報酬、デューデリジェンス(買収監査)の費用などが発生する場合があります。一方、破産は、申立ての準備に数週間から数か月、申立て後も手続の終結まで半年から1年以上かかることがあります。申立てには弁護士費用のほか、裁判所に納める予納金も必要です。

大切なのは、どちらの手続にも「最低限の資金」が必要だという点です。資金が底をついてからでは、M&Aの交渉を進める余力も、破産費用を用意する余力もなくなってしまいます。

手遅れになる前の判断基準

次のような状況は、早めに方針を検討すべきサインといえます。

  • 税金や社会保険料、取引先への支払いが遅れ始めている
  • 借入れの返済が難しく、リスケジュール(返済猶予)を繰り返している
  • 従業員の給与の支払いに不安がある
  • 手元資金が数か月分を切っている
  • 新たな借入れが難しくなっている

特に、資金が1〜2か月分を切っている場合は、M&Aの時間が足りない可能性があります。その場合でも、事業譲渡と破産を組み合わせるなど、選択肢が残されていることがあります。

どの専門家に、どの順番で相談すべきか

相談先ごとの役割

それぞれの専門家には得意分野があります。

  • 弁護士:債務整理、破産、再生手続、個人保証への対応など、法的な全体設計を相談できます。
  • M&A仲介会社・フィナンシャルアドバイザー:買い手探しや条件交渉を担います。ただし、小規模・債務超過の案件は受任されない場合もあります。
  • 事業承継・引継ぎ支援センター:各都道府県にある公的機関で、無料で相談でき、後継者探しや第三者承継を支援しています。北海道にも窓口があります。
  • 税理士・公認会計士:財務内容の整理や企業価値の把握をサポートします。

まず弁護士に相談する意味

M&Aが可能か破産が適切かは、債務の額、資金の残り期間、保証の状況などを総合して判断する必要があります。弁護士に早い段階で相談すれば、M&Aを進めながら、同時に破産を含む「次善の策」を準備することも可能です。破産は決して「失敗の終着点」ではなく、債務を整理して経営者自身が再出発するための手段のひとつです。選択肢を並べて比較できる状態にすることが、結果として従業員や取引先、そして経営者ご自身を守ることにつながる可能性があります。

おわりに

会社の売却と破産は、対立する選択肢ではなく、状況に応じて使い分け、場合によっては組み合わせて考えるものです。赤字や債務超過でも売却の可能性が残されていることもあれば、早めに破産を選ぶことで、被害を最小限にして再出発できることもあります。いずれにしても、判断を先延ばしにするほど選べる道は狭くなっていきます。

当事務所では、法人破産・倒産整理でお困りの経営者の方のご相談を随時受け付けております。初回相談は無料ですので、一人で抱え込まずにまずはお気軽にご連絡ください。経験豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた最善の解決策をご提案いたします。

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