「資金繰りが厳しく、会社をたたむことも考え始めた」「債務超過で先が見えないが、破産という言葉には強い抵抗がある」。そのような思いを抱えながら、夜も眠れない日々を過ごしている経営者の方も多いのではないでしょうか。
会社の整理には、破産のほかに「特別清算」という選択肢があります。ただ、名前は聞いたことがあっても、破産とどう違うのか、自社が使える手続きなのか、費用や期間はどの程度かかるのかが分からず、判断できないと感じている方も多いかもしれません。代表者の連帯保証、取引先や従業員への影響、子会社や休眠会社の整理など、気になる点もそれぞれ異なるはずです。
今回のコラムでは、特別清算の基本的な仕組み、破産との違い、向いている会社の特徴、認められにくいケース、そして弁護士に相談するタイミングと費用感について解説します。
特別清算とは何か
特別清算の基本的な仕組み
特別清算とは、会社法に定められた、株式会社のための清算手続きです。解散した株式会社が債務超過の疑いがある場合などに、裁判所の監督のもとで債権者の協力を得ながら進めます。
通常の清算(通常清算)は、資産で借入金などの債務を完済できる会社が行う手続きです。これに対し、債務超過で通常清算ができない会社が、破産ではなく、債権者の多数の同意を得て債務をカットしてもらいながら整理を進めるのが特別清算です。
具体的には、清算人が債権者に対し、資産の状況を説明したうえで弁済の協定案を示します。債権者集会で、出席した議決権者の過半数の同意と、議決権総額の3分の2以上の同意が得られれば協定が成立します。その内容に沿って弁済を行い、残りの債務について免除を受けたうえで、手続きを終結する流れです。
破産との主な違い
破産と特別清算の違いは、おおまかに次のとおりです。
- 手続きの主導者:破産では裁判所が選ぶ破産管財人が財産の管理・処分を行います。特別清算では、原則として会社が選んだ清算人(多くは代表者や関係者)が手続きを進めます。
- 進め方の柔軟性:特別清算は債権者との協議が中心となるため、資産の売却方法や時期について、柔軟に対応できる可能性があります。
- 対象となる会社:破産は法人全般が対象ですが、特別清算は株式会社に限られます。
- 債権者の同意:特別清算は債権者の多数の同意が前提です。破産には同意は必要ありません。
- 社会的な印象:特別清算は、破産よりも穏やかな手続きとして受け止められやすい面があるといわれます。
もちろん、どちらが優れているということではありません。会社の状況に合った方法を選ぶことが、円滑な再出発につながると考えられます。
特別清算が向いている会社の特徴
特別清算を検討しやすいケース
特別清算は、次のような会社で検討されることが多い手続きです。
- 子会社・関連会社の整理:親会社が最大の債権者である場合、親会社の同意を得やすく、手続きを進めやすい可能性があります。
- 債権者の数が限られている会社:金融機関や主要な取引先など、債権者が少数であれば、協議や同意の取り付けがしやすいと考えられます。
- 休眠会社・事業を終えた会社:負債が比較的小さく、債権者と話し合いが可能な場合には、選択肢になり得ます。
- 取引先との関係を大切にしたい会社:地域の取引先や仕入先との関係を保ちたい場合、個別に説明を重ねながら進められる点が利点となる可能性があります。
北海道・札幌でも、長年の地元取引先との関係が事業の土台になっている中小企業は少なくありません。そうした会社が、関係者への影響をできるだけ抑えながら事業を閉じたいという場面で、特別清算が検討されることがあります。
代表者の連帯保証・費用・期間への影響
ここで注意したいのは、特別清算を選んでも、代表者の連帯保証債務が自動的になくなるわけではないという点です。会社の債務が整理されても、金融機関などが保証人である代表者へ請求を続ける可能性があります。保証債務については、別途、債権者との交渉や、「経営者保証ガイドライン」の活用、個人の破産や再生手続きなどを検討する必要が生じることがあります。
費用や期間は、会社の規模、債権者の数、資産の状況によって大きく異なります。一般的には、債権者との調整が順調であれば、数か月から1年程度で終結する例もありますが、あくまで目安です。弁護士費用に加え、裁判所に納める費用や官報公告費用なども必要になります。具体的な金額は事案ごとに異なるため、見積もりを取って確認することが大切です。
特別清算が認められにくいケースとリスク
手続きが難しくなる主な場面
特別清算は、債権者の同意が前提となるため、次のような場合には難しくなる可能性があります。
- 債権者の反対が強い場合:大口債権者が協定案に反対すると、協定が成立しないおそれがあります。
- 債務超過が大きく、弁済率が極端に低い場合:債権者にとって破産のほうが公平だと判断されやすくなります。
- 資産や負債の状況が不透明な場合:経理が整理されていない、一部の債権者だけを優先して支払っているなどの事情があると、手続きの信頼性が損なわれる可能性があります。
- 否認権の行使が必要になりそうな場合:不自然な財産移転や偏頗弁済(特定の債権者だけへの優先的な返済)が疑われる場合には、管財人による調査が可能な破産のほうが適切とされることがあります。
こうした事情があるときは、手続きの途中で特別清算が行き詰まり、破産手続きに移行することもあります。その場合、時間や費用が余計にかかってしまう可能性があるため、最初の見極めが重要です。
「破産は避けたい」という思いとの向き合い方
「破産だけは避けたい」というお気持ちは、よく分かります。ただ、破産は決して悪いことではなく、債務を整理して新たなスタートを切るための法的な手段です。無理に特別清算にこだわった結果、時間や資金を消耗し、かえって関係者に迷惑をかけてしまうケースも考えられます。
大切なのは、手続きの名前ではなく、債権者・従業員・ご自身の生活への影響を総合的に見て、最適な方法を選ぶことです。
弁護士に相談するタイミングと費用感
相談は「早め」が選択肢を広げる
特別清算のような債権者との協議が必要な手続きは、会社にまだ一定の財産や信用が残っているうちほど、選べる道が広がる傾向があります。資金が底をつき、支払いが止まってからでは、債権者の理解を得にくくなる可能性があります。
次のような状況であれば、一度専門家に相談することが考えられます。
- 債務超過の状態が続いており、改善の見通しが立たない
- 金融機関や取引先への支払いが遅れ始めている
- 休眠状態の会社や子会社を整理したい
- 代表者の連帯保証をどうすべきか悩んでいる
弁護士費用の考え方と相談の準備
弁護士費用は、会社の規模や債権者の数、手続きの難易度によって変わります。一般に、破産より特別清算のほうが調整事項が多く、費用が高くなる場合もあれば、資産が少なく債権者が限られる場合には負担が抑えられる場合もあります。費用の内訳や支払い時期について、事前に弁護士へ確認しておくと安心です。
相談の際は、決算書(直近2〜3期分)、借入金・債権者の一覧、会社の資産が分かる資料、代表者が保証している債務の資料などを可能な範囲でご用意いただくと、話がスムーズに進みます。ただし、資料が揃っていなくても相談は可能です。
おわりに
特別清算は、債務超過の株式会社でも、債権者の理解を得ながら会社を整理できる可能性がある手続きです。一方で、債権者の同意が必要であること、代表者の連帯保証は別途対応が必要になることなど、注意すべき点もあります。自社に特別清算が適しているのか、あるいは破産などほかの方法のほうがよいのかは、会社ごとの事情によって異なります。
会社を整理することは、決して終わりではなく、経営者ご自身と関係者が新たな一歩を踏み出すための手段です。早めに状況を整理することで、選べる道が広がる可能性があります。
当事務所では、法人破産・倒産整理でお困りの経営者の方のご相談を随時受け付けております。初回相談は無料ですので、一人で抱え込まずにまずはお気軽にご連絡ください。経験豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた最善の解決策をご提案いたします。